夜明けのポンチョマン

さすらいさすらってながれてながされて

きっと浮浪者と思ったに違いない

先日、あるカレー屋に行った。

 

 

こだわり溢れた店主が一人で切り盛りしてるお店だ。

 

 

そのカレー屋はめちゃくちゃ人気のお店なので行列対処のため、最近記帳システムを採用することになった。

 

 

開店前にお店に行き、店内入口にある記帳簿に記入して、また書いてある時間帯に戻ってくるというシステムだ。

 

 

何度か行ったことがあるお店だったが、そのシステムを採用してから行くのは初めてだった。

 

 

手探りのまま朝早くの開店前に到着し、店の扉を開けた。

 

 

扉を開けてすぐのところに記帳台があった。

 

 

なるほど、ここに記帳をすればいいわけだな。

 

 

私が記帳をしていると、その前に記帳していた客が店内にもう少し踏み込んでカウンターの中にいる店主に色々質問をしていた。

 

 

 

「戻ってきたらどこに並べばいいですか?」

 

「複数人でくる場合は代表者が書けばいいんですか?」

 

 

 

と矢継ぎ早に質問をして、店主がひとつひとつ丁寧に答えていた。

 

 

つい最近できたシステムだ。

 

 

わからないことがたくさんあっても不思議じゃない。

 

 

その客の質問が一通り終わったあと、自分も少し聞きたいことがあったので一歩踏みだし、口を開こうとしたとき

 

 

 

「あ!今仕込み中なんで!!」

 

 

 

と店主が右手で制すポーズをしながらキツめの口調で私に向かって言った。

 

 

 

あっけに取られながら、瞬時にその発言の意図を汲み取った。

 

 

 

あ、なるほど仕込み中にあんま店内に入って欲しくないよな…

 

 

一歩引いてその場で質問をしようと口を開こうとした瞬間

 

 

 

「話しかけないでもらえますか!?」

 

 

 

と据え置きのキツめの口調で言われた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

え?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

え??

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

え??

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いや、さっきこの目の前にいる客バンバン話しかけていたよね?

 

 

で、あなたガンガン喋ってたよね?

 

 

 

え、オレが話しかけた瞬間に仕込みが始まったってこと??

 

 

 

オレが仕込みのキッカケってこと??

 

 

 

 

「あ、すいません…」

 

 

やっと口を開いて私が放った言葉はそれだった。

 

 

 

 

結局一切私は質問をさせてもらえず、店をあとにした。

 

 

店を出てなんとなく振り返ると、またその客が店内でガンガン質問していて、店主はそれに答えていた。

 

 

なんなら談笑していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

え、どうゆうこと???

 

 

 

もう仕込み終わったん?? 

 

  

 

 

 

 

もうわけがわからなかった。

 

 

 

 

ない頭を絞り出してある答えにたどりついた。

 

 

 

 

 

そうか、浮浪者に間違われたに違いない。

 

 

 

 

 

そのときの私の服装は、くすんだベージュのダウンに毛玉だらけの紺のウールパンツに紺のニット帽をかぶってマスクをしていた。

 

 

浮浪者に見えなくもない。

 

 

 

 

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理想のイメージ

 

 

 

 

そうか、そうしたらあの店主の言動にも合点がいく。

 

 

 

突然客でもなんでもないヤバい浮浪者が店内に入ってきたので、それ以上店に踏み込まないようにキツい口調で突き放したのだ。

 

 

 

そうだ、それ以外ありえない。

 

 

そうでなければ説明ができない。

 

 

 

しかし私はさきほど記帳簿にしっかりと記入したれっきとした客だ。

 

 

 

きっと再び来店したときに

 

 

 

「あ!お客さんだったんですか!?てっきり浮浪者かと思って…さきほどは大変失礼しました!」

 

 

 

と格別の謝罪をしてくれることだろう。

 

 

 

 

そして時間になり、私は再び来店をした。

 

 

店主が注文をとりにきて、私はその店の看板メニューを注文した。

 

 

注文をとり終えたあと、店主が

 

 

「朝なにを聞こうとしたんですか?」

 

 

と聞いてきた。

 

 

「あ、いや並び方でわからないことがあったんで質問しようかなと思って」

 

 

「ああ、並び方変わったんでね」

 

 

「あ、そっすよね、すいません忙しいときに話しかけてしまって、へへ」

 

 

店主は厨房へ帰っていった。

 

 

 

 

再び店主が現れ、私の目の前に運んできたカレーはもう見た目からしてとても美味しそうだった。

 

 

一口食べた瞬間に複雑で奥深い味わいが口の中に広がり、ものの5分もたたぬうちに完食し、店をでた。

 

 

 

 

ああ、美味しかった。

 

 

私はそのまま幸福感に包まれながらご機嫌に歩みを進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いや、しっかり客として認識してたな〜

 

 

 

 

 

 

後日店のツイッターアカウントを見た。

 

 

「並び方をまだあまり理解していないお客様がいるので、わからないことがあったら店内店主までたずねて下さい」

 

 

私は世の常識はもう信じないと誓った。