サウナのご利用は計画的に
わたしはサウナが好きだ。
社会人になってからラジオと共にどハマりした趣味だ。
なんかオヤジくせーなー
水風呂なんて入れるかよ!頭イカレてんのかよ!
と正直思っていた。
しかし、じっくりとサウナで身体を温めればその水風呂がご褒美へと変わるのだ。
そして水風呂に勢いよく浸かると、段々と身体の内側からジーンと何かが溢れ、それが全身に回り、宇宙へトリップすることができる。
聴覚が鋭敏になり、身体はふわふわ浮いている感覚。
いわゆる“整う”という状態だ。
一度この感覚を得たらもうあなたはサウナの中毒から抜け出せない。
もちろん、サウナに入っている時間が長ければ長いほど、振り幅が大きくなり整いやすくなる。
まだビギナーだったわたしは、わずか5分で限界に達し、勢いよくサウナから飛び出していたが、今ではアベレージ12分は入ることができる。そして出るときは威風堂々とだ。
サウナ・銭湯は安価で、いろんなお店を回る楽しみもあって何より血行がよくなり健康に良い。
20代で出会って本当によかったと言える趣味のひとつだ。
その日もわたしは、ある新規開拓のサウナ店へと訪れていた。
ネットでの評価も高いし、浴室内の設備がめちゃくちゃ充実しているそうだ。
それだけに期待値はとても高かった。
いざ浴室内へと歩を進める。
想像通りの、広くて細部までホスピタリティが行き届いた銭湯だった。
これはリピート確定だろとうと確信した。
さぁそして最重要のサウナへと入る。
・・・
明らかなヤクザが空間の7割占めている
もうゴリゴリの刺青が入ったイカついおっさんどもがひしめき合っていました。
もうファッションタトゥーとかじゃないす。
和彫りす。
ドラゴン舞ってるやつす。
もうゴリゴリす。
怖い・・!入りたくない・・!!このまま引き返したい・・!!
しかしここで引き返したら全員で襲ってくる恐れがある・・
仕方なく、上段の一番端っこにちょこんと座りました。
いやいやいや
そんな人を見た目で判断しちゃいかんよ
刺青=怖い人っていう解釈がダサいよ
そう自分に言い聞かせました。
すると、いかにもチンピラみたいな、これまた和彫りガンガンの若い兄ちゃんたちが入ってきて、ほぼハルクホーガンとルックスが一緒の和彫りのオッチャンに、めちゃくちゃかしこまった挨拶をしだしました。
なんか若い兄ちゃんたちが「オヤジ」と言っているように聞こえます。
まーまーこいつら大家族なのかもしれんし。
するとすぐ隣に座っていた刺青の男たちの会話から
「〜会が・・・」
「〜組が・・・」
という、ドラマでしか聞いたことのない単語のやりとりをポンポンとしていました。
あ、これもう確定だわ。
もうここまでくると腹をくくるしかない。
自分の限界までサウナにいて見届けよう!
そう開き直ると俄然テンションが上がりました。
ふと中段に目を向けると、刺青が全く入っていない色白の小太りのおっちゃんが、ヤクザに囲まれながら何かの雑誌を読みふけってました。
覗き込むとヤクザのゴシップ記事でした。
(おっちゃーん!ころされるよ〜!)
わたしの悲痛な叫びはおっちゃんに届くわけもありませんでした。
するとそのおっちゃんが隣の刺青ゴリゴリのヤクザに雑誌を見せながら
「おい、みろよ。神奈川の〜組の誰々捕まったらしいぞ。下手打ったな。」
と話しかけていました。
(いや、お前もヤクザか〜い!)
(ていうかそうゆう情報源ゴシップ記事か〜い!)
わたしの中でツッコミが飛び交っていました。
すると、幹部らしきヤクザが1人、また2人とサウナから出て、若いヤクザの連中も背中を流すために出て行って、サウナからヤクザがごっそりと消えていきました。
ふぅ・・・
良いもんが見れた・・・
そのとき、すでにサウナの滞在時間は15分を超えていました。
まずい、入りすぎて頭がクラクラする・・・
さぁ出るかと思ったとき、ちょうど入れ違いに2人の男がサウナに入ってきました。
刺青もない。この人たちは明らかにヤクザではない。
テラスハウスの元メンバーだ
テラスハウスフリークのわたしはこの後、なに食わぬ顔で元いた位置にスッと戻り、限界の向こう側で死の淵をさまようのでした。